参加者主体の学びの場をつくりたい人におすすめ『はじめてのファシリテーション -実践者が語る手法と事例』

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こういう本があったらなと思いながら、
これまでなかなかなかったのがファシリテーションの教科書的な本です。

本書は、
まちづくり、学びの場のワークショップ、会議など、
様々な領域での実践と手法について取り上げられていて、
”ファシリテーション”として語られていることの全体像を把握するのにとても有効だと思います。

ファシリテーションの分野は今まで教科書というものがあまり存在していませんでした。
なぜ存在しないのかというとそれはファシリテーションの各種手法の発展の歴史にさかのぼることができます。
現在使われているファシリテーションの理論やその手法群はファシリテーションという言葉でくくられていますが、その成立の歴史はバラバラであることが多いのです。
特に心理学の分野から発展した理論やテクニックがあったり、演劇の分野から生まれたもの、開発教育から発展したもの、そしてビジネス分野で発展したものなど、それら別々のところで発展してきたものが同じ「ファシリテーション」という言葉で語られることが多く、書店で本を探してもなかなか自分の求めているものに出会えないという状況にあるのです。
この本ではそれら多様にまたがる理論やテクニックを俯瞰的に見て整理する挑戦的な本でもあるわけです。(p.2)

とある通り、
ファシリテーションは様々な分野で導入、発展してきているので、一言でこういうものだと語りにくいのですね。

ただ、こうして本書のようにファシリテーションをまとめてみれば、
そこには共通の理念や思い、哲学が浮かび上がってきます。


ファシリテーションの効果として目指しているものは、

・学習を促進させる

・チーム活動でメンバー同士の相乗効果を高める

・想像を超えた問題解決やアイデアをでやすくする

・参加者同士の関係性を構築してコミュニティをつくる

・1人ひとりの内省力を高め、自発性を高める

という5点です。

学習者や参加者一人ひとりが、
主体的に、その場に参加できるようにするものであって、
参加した人たちの思いや経験や知識をもとに、
対話や相互作用を通して、知を生み出していくところに特徴がある。

ファシリテーターはそれを支える役割であって、
学びや対話を促進させる人ということになりますね。

ファシリテーションに関する理論として、
場をつくるとき、対話を進めるときに、
どのようなことに留意したら良いかも書かれていますし、

ワークショップなどで学びの場をつくるときに、
どんな手法を用いたらよいかも色々と書かれています。

ワールドカフェ
オープンスペーステクノロジー
Art of Hosting
アクティブ・ブック・ダイアログ(ABD)
などなど、
いろんな手法がまとめられていて、
本書を導入編として、それぞれの手法を深めていけるとおもしろいと思います。

一人ひとりの知や経験やアイデアを生かして、
新しいことを生み出したり、問題解決をしたり、互いに学び合っていくことは、

創発系の学びとしてとても大切なことです。

誰かに何かを教えてもらう、
正解を教えてもらう、
というだけではなく、
自分たちで知を生み出していくという実践が、
これからも広がっていけばと思います。

そして、
そのような学びの場をつくるファシリテーターが増えていくことも、社会をおもしろくすると思います。

教育現場においてはファシリテーションを導入することで、一方通行の学びの場に比べ、一人ひとりが考える時間が増え、また知識をもとに対話する中で新たな気づきや知識の定着につながるようになっていきます。学びの中で参加者自身がアウトプットする機会があるのも学習効果につながっていきます。(p.6)

チーム活動にファシリテーションを取り入れることで一部のリーダーが引っ張っていくプロジェクトから、よりメンバーの主体性が引き出され、より活発なやりとりが生まれ、その結果思いもかけない成果が生まれたりします。(p.6)

まちづくりや企業の新規事業の創造など創造的な場ではファシリテーションを活用することで新しいアイデアが生まれやすくなり、膠着していた問題を解決したり、誰もが驚くようなイノベーションを生み出したりすることが可能になります。(pp.6-7)

多様な人が集まる場で丁寧にファシリテーションを行うと安全に関係性が築かれ、参加者同士が好奇心でつながるようになっていきます。よりありのままを出せる関係になっていくことで、そこにコミュニティが築かれていくことになります。(p.7)

ファシリテーションプロセスは参加者1人ひとりに考える時間を作っていきます。時に多様な人とのかかわりの中で、自分の価値観を問い直したり、自分の大切なものを考える時間も得られ、実現したい夢やアクションしたい次のステップが立ち現れ、1人ひとりの主体性に火が付くこともよくあります。(p.7)

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