ペアレントクラシーがものをいう世界

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&deco(glay,,small){(Photo by rawpixel.com on Pixabay)}

今日の近畿大学の生涯学習概論は、教育格差と生涯学習をテーマにしました。

文化的再生産、
ハビトゥス、
ペアレントクラシー、
がキーワードです。

学歴がどうして再生産されるのか、
どうして学校に入学する時点ですでに差が生じてしまうのか、
どうしてワインやクラシックを好む家庭と子どもの学歴が相関するのか、
などなど。

教育格差の研究が明らかにするのは、大規模な調査でみてみると、小学校入学前にできている学力の差は、小中高を通して埋まることはなく、むしろ拡大する、というものです。

身も蓋もない話です。

子どもの学力に大きな影響与えるのは、
親が教育熱心かどうか、
親が子どもにどれくらいリソースを割くか、
です。

親の影響によって子どもの学歴が決まる傾向にある社会が、ペアレントクラシーです。

能力主義、実力主義の社会がメリトクラシーですが、教育はある程度メリトクラシーを目指してきましたが、本人の努力や能力や実力よりも、ものをいうのは親の影響になってしまっています。

僕が初めてペアレントクラシーを実感したのは、京都に引っ越してきたときでした。

不動産屋で引越し先を探している際に、「大学の近くで良い物件がなければ、京都御所の南のこのエリアでいい物件はないですか?」

ときいたら、

「お客様、御所南のエリアはもっと難しいです。ここは御所南小学校にお子様を通わせようという教育熱心な親御さんが多くて人気なエリアです。ワンンルームの部屋が空いたら、それこそ争奪戦で、家賃が10万円の部屋がすぐに埋まります。
住民票を手に入れて、遠くのエリアからでも小学校に車で子どもを送迎して通わせるのです」
とのこと。

「え?御所南小学校って公立の小学校ですよね?部屋を借りて、そこには住まないのですか?」

「そうです」

「遠くのエリアからわざわざ子どもを通わせるのですか?」

「はい」

今から7年前のことですが、最初は、そこまでする意味がわからなかったんですね。

ところが、ペアレントクラシーや教育格差について理解してみると、これは”とても大切な行動”になることがわかります。
教育熱心な親が多いエリアの学校だと、子どもの学力が高くなる傾向があります。

言われてみればあたり前ですが、そんな子どもたちが交流すれば、
自然と切磋琢磨しますし、
学校は荒れないですし、
先生は授業に集中してレベルの高いことまで扱えますし、
家庭同士の交流や友達づきあいから得るものも多いし、
子どもたちの習い事や趣味もレベルが高いし、
言葉遣いや教養や読む本も文化的になるし、
という好循環の雰囲気や文化が形成されます。

その文化やあたり前が子どもを育てることになります。
マインドセットを左右します。

その小学校に通わせるためだけに、家賃に毎月10万円以上払う世界があるのかぁ、と京都に引っ越してくる前の自分は思ったのでしたが、教育熱心な親御さんがやることは、現状の社会を考えるととても効果的な策だといえます。

子どもたちをどこの保育園に通わせるか情報収集した際にも、ペアレントクラシーの世の中をひしひしと感じたものです。保育園によって文化差が感じられますし、そこに通わせる親の層みたいなものも感じます。

そんな世界に生きている人には、子どもの貧困の実態は見えにくく、近大生にはそういう世界は見えていなかったようです。
恵まれている人ほどわからないですよね。

修学旅行に行けない子どもの話、家庭的な事情で高校に進学できずに水商売の世界に巻き込まれていく子どもの話など、だいぶ衝撃的だったようで、いろんな感想をいただきました。

自分の力や実力で勝ったと思っているかもしれませんが、ある程度それは正しいものの、ある程度は親の影響、家庭の文化資本、家庭の経済資本などの影響によるものなのですね。

<まとめ>
■学力や学歴に大きな影響を与えるのは、本人の能力や努力以上に、親の影響が大きくなっている社会を、ペアレントクラシーと呼ぶ。
■親が教育に熱心か、リソースを割いているか、それが子どもに影響を与える。そして、高学歴で高収入な親ほど、子どもの教育に熱心な傾向がある。
■現状においては、教育熱心な親が多いエリアの学校に通うと、子どもの学力や学歴が高くなる傾向がある。

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