組織のなかの暴力性と向き合う(『他者と働く 「わかりあえなさ」から始める組織論』より)

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ナラティヴアプローチを経営学における組織論に持ち込んでいて、わかりやすく、すっと読めました。
対話やナラティヴアプローチを、こういう形で接続させればいいのか、という点がおもしろかったです。

あとは、組織における「戦略」という言葉の持つ暴力性を指摘している点です。
経営戦略室などの戦略を立案する組織と、その戦略を実行する組織に分かれる場合の、戦略に従わないことを暗に否定してしまう部分ですね。

それは、治療的「介入」という際の、「介入」のもつ言葉の暴力性からも着想を得ている点でもあります。

上司が部下に与える指示命令や人材育成の観点の中に、良かれと思って暴力的な余地が入り込んでいないかを、ナラティヴアプローチの視点から、柔らかく指摘している点が好感を持てました。

あとは、なんといっても、本書のおわりにの章ですね。
さらりさらりと読んでいって、おわりにで、急に涙がこみ上げてきました。
ずるいわぁ。こういう仕掛けは。

本書を構成している背景には、べてるの家の実践に学んだ筆者の姿勢があるのと、おわりにで述べられているナラティヴの影響がいい感じに響いていますね。

「わかりあえなさ」を出発点にしながら、
やわかく橋をつないでいく姿勢が、
昨今の組織論の中に自然と入ってきていることを、とても頼もしく感じますし、これからの未来が楽しみでもあります。

”誤解のないように申し上げますが、能力開発が無駄だと言っているわけではありません。それ以前に、仕事におけるナラティヴを形成していくことが疎かになっているという問題があると言っているのです。だから、上司の視点と尺度で「部下の能力を向上させよう」というナラティヴを一度脇に置くことが大切なのではないでしょうか。一度脇に置いた上で、対話のプロセスを大切にしながら、部下が仕事のナラティヴにおいて主人公になれるように助けるのが上司の役割なのではないでしょうか。”
(p.124)

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